2019年ラグビーワールドカップ最初のビッグマッチは、2011年と2015年のワールドカップチャンピオン、ニュージーランドの強さが、ラグビーチャンピオンシップを優勝したばかりの南アフリカを相手に際立っていました。
私たちは南アフリカがオールブラックスの攻撃を抑えるために取った作戦、そしてニュージーランドがそれに対抗するために採用したプレースタイルを調べるため、スタッツを精査してみました。
クイックボール対スローボール。ランナーの幅をどのように調節し、その効果はどうだったのでしょうか?
このスポーツコードのアウトプットウィンドウは、ニュージーランドのアタックマップを示しています。
アタックマップは、アタックのときのチームの幅を表現しています。(ポゼッションの始まりによって、パスのターゲットまでの距離がどう違うかを表しています)。
ニュージーランドは、南アフリカがニュージーランドのアタックの幅を乱すため、攻撃的なラインスピードで来ると予測していました。もし広いチャンネルでアタックすれば、南アフリカのラッシュディフェンスに捕まってしまうことになります。(16対16の引き分けに終わった、ラグビーチャンピオンシップの試合がそうでした)。
ラグビーチャンピオンシップのとき、ニュージーランドのアタックの幅は平均15mでした。昨日、その距離は平均10mになっていました。
上の棒グラフは、ニュージーランドがスローボールの時、ラックの近くにボールキャリアーをセットし、南アフリカが攻撃的なラインスピードでゲインラインを超えてタックルするのを防いだことを示しています。
- ニュージーランドはスローボールの53%を、ラックから10m以内の位置にボールキャリアーを走らせました。
このスローボール戦術により、ポッドをラックに近いところにセットし、ゲインラインを超え、スローボールから勢いを生み出しました。つまり、ワイドに展開する権利を得たのです。チームの典型的なスタイルである、ラックから離れたポッドへのより長い距離のパスは、ラッシュディフェンスに対しては危険です。これこそ、ニュージーランドがラッシュディフェンスに苦しんだラグビーチャンピオンシップの試合から学んだ教訓なのです。
クイックボールでは、ニュージーランドは10番からのインサイドパス、またはオープンサイドに位置するウィングへのキックパスによって作り出したスペースを攻撃できました。
オールブラックの最初のトライにつながった一連のプレーは、リッチー・モウンガがラッシュディフェンスの背後のスペースにいるウィングのセヴ・リースを見つけ、クロスキックを出したところからときに始まりました。
攻撃的なラインスピードをとると、ディフェンスラインを形成するまでの時間が少なくなるため、クイックボールに対して対応が脆くなります。
アウトサイドへの攻撃:リッチー・モウンガはラッシュディフェンスの背後のエリアへ、
絶妙なタイミングでクロスキックを出しました。
南アフリカのディフェンシブラックの分析
南アフリカは試合開始から激しく、ブレイクダウンに多数のプレーヤーを投入し、攻撃的なラインスピードでオールブラックスの攻撃を寸断しようとしました。しかしこの戦術を遂行するには、この日のスプリングボクスよりもはるかに高いレベルの精度が必要でした。
- 南アフリカは、全ラックの3分の2以上でコンテストしました。
- しかしその結果は、たった1回のターンオーバーに終わりました。
- すべてのコミットメントの中で、南アフリカはダブルタックルは5回だけ、ドミナントタックルはわずか25%だったため、ニュージーランドの攻撃の勢いは衰えず、オフロードにも成功しました。
- オフロードの成功数は、南アフリカの2回に対して、ニュージーランドは8回でした。
- 南アフリカのタックルミスはニュージーランドよりも7つ多く、5つのペナルティを与えました。
試合開始からの速い仕掛けにも関わらず、
たった1回のターンオーバーと29%の効果的なラックへのコンテストでは、
オールブラックのアタッキングストラクチャーを80分以上押さえ込むのは難しい話です。
ニュージーランドの南アフリカのディフェンシブラックの比較分析
対照的に、オールブラックスはほとんどの場合、ラックでのボールへのコンテストは行いませんでした。
- ニュージーランドがディフェンシブラックでコンテストしたのは、33%だけです。
- むしろ、次のディフェンスのフェーズにより多くの選手を投入することを選択しました。
- ニュージーランドは、56%の精度でディフェンシブラックへのコンテストを成功させ、南アフリカのクイックボールを防ぎました。
- ニュージーランドは22回のダブルタックルを遂行しました。その結果、南アフリカのオフロードとセカンドフェーズでのクイックボールを制限しました。
- ニュージーランドのタックルの75%が、ドミナントタックルでした。
ここに挙げたスタッツはすべて、ニュージーランドが南アフリカの攻撃の勢いを止め、得点やペナルティーをほとんど与えることもなく、ゲームの大部分の時間で南アフリカの攻撃力を発揮させなかった結果です。
しかし、南アフリカの最初のピーターステフ・デュトイのトライは、ニュージーランドが危険なゾーンでのラックへのコミットメントを怠ったことと、ラック近くにスペースを残してしまった結果でした。
南アフリカと比較すると、ニュージーランドは3回のターンオーバーを獲得し、
また56%という高いコンテスト率を示しました。
ニュージーランドの相手ボールラックへのコミット不足が、ピーターステフ・デュトイのトライを招きました。
結論
南アフリカの速い仕掛けは、オールブラックスを一瞬慌てさせたかに見えましたが、この支配していた時間内にわずか3点しか取ることができませんでした。この時間帯にハンドレ・ポラードがペナルティキックをミスして6対0にできなかったことがゲームの流れの転換点でした。程なく、オールブラックスはスプリングボクスの2回のミスに乗じ、スコアを17対3にして前半を終了しました。
南アフリカはニュージーランドよりもミスタックルが7つも多く、さらに5つのペナルティを与えました。ディフェンスでプレッシャーをかけ、相手のエラーを誘い得点を獲得するには、ブレイクダウンとオープンフィールドの両方で、はるかに強い規律と精度が求められます。
Hudlは現代のラグビーにどんな力を与えているのか、詳しくはHudlの最新ニュースの載ったニュースレターか、スタッド・ロシェル(日本語)やノースハーバー・ラグビーユニオン(英語)のケーススタディをぜひご覧ください。
(原文)All Blacks vs Springboks: How to Beat the Rush Defence
https://www.hudl.com/blog/all-blacks-vs-springboks-how-to-beat-the-rush-defence